比較的気取らないスタイル(安価)な自転車の持ち主(おっさん、おばはん)に見られる傾向だが、写真の様に自転車のサドル下の空間にあるバネを利用して布を挟んでいるのを見かける。これは雨上がりなどにサドルの水を拭うためと推測される。見た目はともかくとして、道具(布)と処置が必要となる対象(サドル)が近く、水に濡れたサドルを拭く、という問題を早い時間で解決できる。さらにはバネに挟むことによって布の落下を防ぎ、放置しておいても布が乾くという何重のも利便性が見て取れる。「サドルの下デザイン」を考察してみる。
★デザイン的考察★
①道具(布)と処置が必要となる対象(サドル)が近く、水に濡れたサドルを拭く、という問題を早い時間と簡単なアクションでストレスなく解決できる。収納も簡単である。
②本来、自転車の搭乗性を上げるためのサスペンションであるサドルのバネに布を挟むという新たな機能を与え、布の落下を防ぐことに成功している。
③自転車は外に駐輪しておく事が多いので晴天時には自然に布が乾くし、雨天時はサドルが多少の雨を防ぐ役割をしている。
:::結論:::
自転車の持ち主の必要性が上手く解決されたデザインであり、見ただけで用途と意図がすぐ理解できるという、“問題と解決方法が視覚化”された良い例。手短にある物を利用して必要性を満たすも事は良いデザインの見本であろう。その証拠に多くの人々が同様の行為をしている。
しかしながら、“サドルの下デザイン”理念に乗っ取り、この様に布を挟むのは一部の使用者(おっさん、おばはん)に限られる。なぜなら、それはかっこ悪いからであり、高価な自転車の持ち主にはスタイルとして許容できないのである。高価な自転車のサドルの下には専用のポーチがつけられている事が見られる。それは積載量が限られる自転車の空間を最大利用しようとする意図ではあるが、ポーチを開けるためのファスナーなどが、中身までのアクセスにアクションを増やす要因になっている。さらには濡れた布を自然乾燥させる事もむづかしくさせる。つまりは、見た目の悪さという事で、この秀逸なデザインは使用者を限定している。それはカッコイイ或いはカッコ悪いという社会性、心理に由来しているのが興味深い。
:::発展:::
ポーチにしまわずに布をデザインして敢えて見せることによって、問題解決にするのはどうだろうか。例えば布を小さな旗の様にして、サドルの下から垂らし、走る間はその旗がたなびく様にする。この布には搭乗者の理念などを図案化しても良いし、見栄えの良い自分だけのオリジナルグラフィックにしても良い。これによって見るものを楽しませるし、駐輪場で自分の自転車を見つけやすくなるかもしれない。オリンピックの期間などは自国の国旗をたなびかせるのも面白いかもしれない。さらには光に反射する糸を織り込んだ布を使用すれば、夜間の走行時に車のヘッドライトで注意を引きやすくなり、安全性が上がる。雨天時は使用しないのでサドルの下に収納すれば良い。勿論、雨天後にはサドルを拭いて、旗にして乾かせば良いのである。